2025年6月3日、日本プロ野球界の永遠のスター、長嶋茂雄さんが肺炎のため89歳でその生涯を閉じられました。「ミスター・ジャイアンツ」として国民に愛され、数々の伝説を打ち立てた長嶋茂雄さんのご逝去の報に、日本中が深い悲しみに包まれています。その偉大な功績とともに、今、多くの人々の関心を集めているのが、長嶋茂雄さんが遺された莫大な財産の行方、そして複雑な家庭環境が絡む遺産相続の問題です。
特に、長男である長嶋一茂さんの過去の「相続放棄」発言の真偽や、近年設立された「長嶋茂雄一般財団法人」の役割については、様々な憶測が飛び交っています。この記事では、2025年6月現在の最新情報と報道に基づき、これらの疑問点を徹底的に調査し、読者の皆様が知りたい核心に迫ります。
この記事を読むことで、以下の点が明らかになります。
- 長嶋茂雄さんが遺された推定20億円ともいわれる財産の詳細な内訳は何か?
- 法定相続人は誰で、遺産はどのように分配される可能性があるのか?
- 長嶋一茂さんの「相続放棄」発言は法的に有効なのか、その背景にある父子間の確執とは?
- 新たに設立された「長嶋茂雄一般財団法人」の目的と、遺産相続への関わりは?
- 複雑な長嶋家の状況が、今後の遺産相続にどのような影響を与えるのか?
ミスターが球史に刻んだ輝かしい足跡とともに、その遺産が今後どのように受け継がれていくのか。本記事が、その全貌を理解するための一助となれば幸いです。
1. 長嶋茂雄の財産は?田園調布の自宅以外にも巨万の富
国民的スーパースターとして長年にわたり球界の頂点に君臨し続けた長嶋茂雄さん。その活躍は野球界にとどまらず、CM出演やタレント活動など多岐にわたりました。これらの活動を通じて築き上げられた長嶋茂雄さんの財産は、一体どれほどの規模になるのでしょうか。報道されている情報を元に、その内訳に迫ります。
1-1. ミスターが築き上げた巨万の富、その総額とは
長嶋茂雄さんの総資産については、複数のメディアが報じており、その額は推定17億円から20億円に上るとされています。この巨額な資産は、主に不動産、そして読売巨人軍からの報酬や肖像権収入などによって形成されたものと考えられます。現役時代から監督時代、そして終身名誉監督としての長きにわたる球界への貢献が、経済的な成功にも結びついた結果と言えるでしょう。
特に、東京都内の一等地に所有する不動産は、その資産価値の大きな部分を占めています。また、終身名誉監督としての報酬も相当額に上ると推測され、これらの収入が安定した資産形成を支えてきたと考えられます。長嶋茂雄さんの名前そのものが持つブランド価値も計り知れず、肖像権や関連グッズなどからの収入も無視できない要素です。
1-2. 不動産資産の詳細:田園調布の豪邸から各地の物件まで


長嶋茂雄さんの資産の中核を成すのは、その豪華な不動産群です。主なものとして以下の物件が報じられています。
田園調布の自宅(東京都大田区)
長嶋茂雄さんの象徴ともいえるのが、東京都大田区田園調布3丁目に構える豪邸です。この自宅は1971年に新築されたもので、レンガ風の瀟洒な外観を持つ地上2階、地下1階建ての建物です。敷地面積は約590平方メートル(約178坪)にも及び、2019年の報道(FLASH)では土地だけで約6億3600万円の価値があるとされていました。近年の都心不動産価格の上昇を考慮すると、現在の評価額はさらに高まっている可能性があります。この自宅は、長嶋茂雄さんの個人事務所である「株式会社オフィスエヌ」の登記上の所在地ともなっていました。2022年に長嶋茂雄さんが体調を崩されてからは、1階部分をバリアフリー化するなどの改修も行われたと報じられています。
世田谷区上北沢の土地・マンション
長嶋茂雄さんは、かつて世田谷区上北沢にも居を構えていました。この物件は、長嶋茂雄さんが田園調布に転居した後、中曽根康弘元首相が1980年から2001年まで居住していたことでも知られています。現在は建て替えられマンションとなっており、その一部または土地を長嶋家(あるいはオフィスエヌ名義)が所有し、賃料収入を得ている可能性があります。2019年の報道では、この土地・マンションの評価額は約5億2400万円とされていました。


箱根の別荘(神奈川県)
リゾート地として名高い箱根にも別荘を所有していたと報じられています。主に静養やリフレッシュのために利用されていたと考えられ、その評価額は約1億6900万円(2019年報道)とされています。自然豊かな環境で、多忙な日々を癒すための場所だったのかもしれません。
その他の不動産
上記以外にも、世田谷区や大田区に複数のマンション物件を所有しているとの情報もありますが、詳細は公表されていません。これらの不動産は、長嶋茂雄さん個人名義のものと、資産管理会社である「株式会社オフィスエヌ」名義のものが混在していると見られています。オフィスエヌは、長嶋茂雄さんの妻であった故・亜希子さんが設立に関わり、現在は次女の長島三奈さんが代表取締役を務めています。
これらの不動産だけでも、合計すると10数億円規模に達する可能性があり、長嶋茂雄さんの財産の大部分を占めていることがうかがえます。
1-3. 金融資産とその他の収入源:終身名誉監督報酬や肖像権
不動産以外にも、長嶋茂雄さんには多額の金融資産や継続的な収入源があったと考えられます。
読売巨人軍からの報酬
長嶋茂雄さんは読売ジャイアンツの終身名誉監督であり、球団から相当額の報酬が支払われていたと推測されます。一部報道では、年間約1億円とも伝えられており、これが長年にわたり安定した収入となっていたことでしょう。その功績と球団への貢献度を考えれば、破格の待遇も不思議ではありません。
文化功労者年金
2021年にプロ野球界で初めて文化勲章を受章し、文化功労者にも選ばれています。文化功労者には終身年金として年額350万円が支給されるため、これも収入の一つとなっていました。
肖像権収入
「長嶋茂雄」という名前とイメージは、絶大なブランド価値を持っています。CM出演、記念グッズの販売、メディア露出など、その肖像権から生じる収入も莫大なものがあったはずです。これらの権利は主に「株式会社オフィスエヌ」が一括して管理し、そこから長嶋茂雄さん個人や家族へ分配される形が取られていたと考えられます。
これらの収入源を総合すると、金融資産も相当な額に上っていた可能性が高いです。ただし、具体的な金額については公表されておらず、あくまで推定の域を出ません。
1-4. 佐倉市の生家は現在どうなっているのか?


長嶋茂雄さんの財産という文脈からは少し外れますが、出身地である千葉県佐倉市臼井町にある生家についても触れておきましょう。この生家は長嶋茂雄さんが高校卒業まで過ごした場所であり、ファンにとっては聖地の一つとされてきました。しかし、2016年の報道(女性セブン)によれば、長嶋茂雄さんのご両親と長兄が亡くなられた後、空き家となり、手入れがされないまま廃墟化しているとの情報がありました。
雑草が生い茂り、不法投棄なども見られる状態で、近隣住民からは苦情も出ていたようです。この生家は長嶋茂雄さんの直接の所有物ではなく、親族が相続されたとされていますが、管理が行き届いていない状況が伝えられていました。現在の状況については詳細な情報はありませんが、国民的スターの生家としては寂しい状態にあったことは事実のようです。これは直接的な遺産分割の対象となるかは不明ですが、長嶋茂雄さんゆかりの場所として、今後の扱いが注目されるかもしれません。
2. 遺産相続はどうなる?相続人は誰になる?


長嶋茂雄さんのご逝去に伴い、その莫大な遺産の相続手続きが開始されます。遺産相続において最も重要なのは、誰が相続人となるのか、そしてどのように遺産が分割されるのかという点です。ここでは、法定相続人とその相続分、そして長嶋家の複雑な家族関係が相続に与える可能性のある影響について解説します。
2-1. 法定相続人とその相続分:4人の子供たちが受け継ぐもの
長嶋茂雄さんの妻であった亜希子さんは2007年9月18日に64歳で逝去されています。したがって、長嶋茂雄さんの相続において配偶者は存在しません。この場合、民法の規定に基づき、法定相続人は長嶋茂雄さんの子供たちとなります。
長嶋茂雄さんには4人のお子さんがいらっしゃいます。
- 長男:長嶋一茂(ながしま かずしげ)さん(1966年1月26日生まれ)
- 長女:長嶋有希(ながしま ゆき)さん(1967年頃生まれと推定、一般人)
- 次女:長島三奈(ながしま みな)さん(1968年6月3日生まれ)
- 次男:長島正興(ながしま まさおき)さん(1970年9月26日生まれ)
この4人の子供たちが法定相続人となり、遺言書が存在しない場合、または遺言書で特定の指定がない財産については、原則として各相続人が均等に相続する権利を持ちます。つまり、各子供の法定相続分は4分の1(25%)となります。仮に総遺産額が20億円とすれば、単純計算で一人あたり約5億円を相続する権利があるということになります。
ただし、これはあくまで法律上の原則であり、実際の遺産分割は遺言書の有無や内容、相続人間の協議、そして後述する長嶋一茂さんの「相続放棄」の意思表示などが大きく影響してきます。
2-2. 故・亜希子夫人の存在と相続への影響
長嶋茂雄さんの妻、長嶋亜希子さんは2007年に心不全のため68歳で亡くなられています。亜希子さんは三カ国語を操る才媛で、1964年の東京オリンピックでコンパニオンを務めていた際に長嶋茂雄さんと出会い、結婚。4人の子供を育て上げ、長嶋茂雄さんの野球キャリアを献身的に支えました。
亜希子さんが既に故人であるため、今回の長嶋茂雄さんの遺産相続において、亜希子さん自身が相続人となることはありません。しかし、亜希子さんが生前に築いた財産や、長嶋茂雄さんとの共有財産がどのように処理されていたかによっては、間接的に影響が出る可能性もゼロではありません。例えば、亜希子さんの遺産相続が未了であったり、特定の取り決めがあった場合などです。しかし、一般的には、亜希子さんの相続は既に完了していると考えられ、今回の長嶋茂雄さんの遺産は、主に子供たちへと引き継がれることになります。
また、亜希子さんは生前、長嶋茂雄さんの資産管理会社「株式会社オフィスエヌ」の代表取締役を務めていました。亜希子さんの逝去後、その役職は次女の三奈さんに引き継がれており、この「オフィスエヌ」が長嶋家の資産管理において中心的な役割を果たしていることが、今後の遺産分割にも関わってくる可能性があります。
2-3. 喪主は次女・三奈さん:その背景と意味するもの
2025年6月3日の長嶋茂雄さんの訃報に際し、葬儀・告別式は近親者のみで執り行われ、喪主は次女の長島三奈さんが務めることが報じられました。一般的に、長男がいる場合に長男以外の子供が喪主を務めるケースは、様々な家庭の事情を反映していることがあります。
三奈さんは、テレビ朝日の記者・キャスターとして活躍後、父・長嶋茂雄さんの個人事務所であり資産管理会社でもある「株式会社オフィスエヌ」の代表取締役に就任しています。特に2004年に長嶋茂雄さんが脳梗塞で倒れて以降は、献身的に父の看病やリハビリを支え、公の場での活動もサポートしてきました。長嶋家の資産管理や権利関係についても、実質的に三奈さんが中心となって取り仕切ってきたと見られています。
このような背景から、三奈さんが喪主を務めることは、長年にわたり長嶋茂雄さんを最も近くで支え、実質的な後見人のような役割を担ってきたことの表れと言えるでしょう。また、長男である一茂さんと長嶋茂雄さんおよび他の家族との間に確執があるとされる状況も、この決定に影響した可能性が考えられます。喪主を務めるということは、相続においても一定の中心的な立場を示すことがあり、今後の遺産分割協議などにおいても三奈さんが主導的な役割を果たすことが予想されます。
2-4. 複雑な家族関係が遺産分割に与える影響とは
長嶋家の遺産相続を語る上で避けられないのが、複雑な家族関係、特に長嶋茂雄さんと長男・一茂さんとの確執、そして一茂さんと他の兄弟姉妹との関係です。これらの関係性が、遺産分割にどのような影響を与えるのかは、多くの人が注目するところです。
報道によれば、一茂さんと父・茂雄さんの関係は、2008年頃から表面化した「長嶋茂雄」の商標権を巡るトラブルや、2009年に報じられた一茂さんによる父の記念品(トロフィーやユニフォーム、故・亜希子夫人の遺品など)の無断売却疑惑などを経て悪化。一茂さん自身も2021年の雑誌エッセイで「父とは13年会っていない」「生きているうちに父と会うことは、もう二度とないだろう」と告白し、事実上の絶縁状態にあることを認めていました。
このような状況下で、遺言書が存在しない場合、法定相続分に従って遺産分割協議が行われることになります。しかし、感情的なしこりがある場合、協議が難航する可能性も否定できません。一茂さんが「相続放棄」の意思を表明していることは後述しますが、これが法的にどのような意味を持つのか、そして他の相続人がそれをどう受け止めるのかも焦点となります。
また、次女の三奈さんが資産管理会社「オフィスエヌ」の代表として長嶋家の資産を実質的に管理してきた経緯や、2023年に設立された「長嶋茂雄一般財団法人」の存在も、遺産分割の行方に影響を与える重要な要素です。これらの法人を通じて資産が管理・運用されている場合、単純な個人資産の分割とは異なるアプローチが必要になる可能性があります。
ミスターが残した偉大な「遺産」は、金銭的なものだけではありません。しかし、その金銭的な遺産を巡って、家族間の絆が試される局面となることは避けられないかもしれません。今後の遺産分割協議の行方が、長嶋家の未来を左右すると言っても過言ではないでしょう。


3. 一茂の遺産放棄は本当なのか?


長嶋茂雄さんの遺産相続において、最大の注目点の一つが長男・長嶋一茂さんの「相続放棄」に関する過去の発言です。この発言は法的にどのような意味を持つのか、そしてその背景にはどのような父子の確執があったのか。ここでは、一茂さんの真意と、それが遺産相続に与える影響について深く掘り下げていきます。
3-1. 長嶋一茂氏の「相続放棄」発言の経緯と真意
長嶋一茂さんは、過去に複数回、テレビ番組などで父・長嶋茂雄さんの遺産相続に関して「放棄する」という趣旨の発言をしています。
- 2019年9月29日放送 フジテレビ系「ワイドナショー」:番組内で遺産相続の話題が出た際、一茂さんは「おれは前、東野君にも言ったじゃん。もう遺産放棄しているって。相続に関しては。実家の方はね」と明言しました。
- 2022年6月26日放送 フジテレビ系「ワイドナショー」:再び相続の話題に触れ、「うちは相続放棄をかなり前からしてるんで、興味がないですね」と発言しています。
これらの発言は、一茂さんが父の財産に対して関心がない、あるいは相続争いに巻き込まれたくないという意思表示と受け取れます。その真意としては、長年にわたる父・茂雄さんや他の家族との確執、そして自らもタレントとして成功し、経済的に自立していることから、実家の財産に頼る必要がないという自負があるのかもしれません。また、複雑な家族関係の中で、相続を巡る更なるトラブルを避けたいという思いもあるのかもしれません。
一茂さんは自身の資産について「50万円くらい」と冗談めかして語ることもありますが、実際にはタレントとしての高額な収入に加え、不動産投資や事業経営(過去には麻布十番での会員制バー経営など)も手掛けており、相当な資産を築いていると見られています。そのため、「実家の遺産は不要」という発言には一定の現実味があるとも言えます。
3-2. 法的観点から見る「生前の相続放棄」の有効性
では、長嶋一茂さんの「相続放棄している」という発言は、法的に有効なのでしょうか。結論から言うと、被相続人(この場合は長嶋茂雄さん)の生前に行われた相続放棄の意思表示は、法律上の効力を持ちません。
日本の民法では、相続放棄は以下の条件を満たして初めて法的に有効となります。
- 相続の開始があったことを知った時(通常は被相続人の死亡を知った時)から3ヶ月以内に手続きを行う必要があります(民法915条)。
- 相続放棄をするためには、家庭裁判所に「相続放棄の申述書」を提出し、それが受理される必要があります(民法938条)。
家庭裁判所に受理されると、その相続人は初めから相続人でなかったものとみなされます(民法939条)。つまり、一茂さんがテレビなどで「放棄している」と述べたとしても、それはあくまで現時点での意思表明に過ぎず、長嶋茂雄さんが亡くなられた今、改めて法的な手続きを踏まない限り、相続権を失うことはありません。
もし一茂さんが正式に相続放棄の手続きを行えば、一茂さんの相続分(法定相続分であれば4分の1)は、他の相続人(この場合は長女・有希さん、次女・三奈さん、次男・正興さん)に分配されることになります。ただし、相続放棄とは別に、相続財産を一切受け取らないという内容の「遺産分割協議」に合意することも可能です。
なお、相続人が相続財産について最低限保障される権利である「遺留分」については、生前に家庭裁判所の許可を得て放棄することが可能です(民法1049条)。一茂さんがこの手続きを踏んでいたかどうかは現時点では不明です。
3-3. 父・茂雄氏との確執:絶縁状態に至った背景
長嶋一茂さんの「相続放棄」発言の背景には、父・茂雄さんとの長年にわたる深刻な確執があります。その関係は、一茂さん自身が「13年以上会っていない」「生きているうちに父と会うことは二度とないだろう」と語るほど、修復困難な状態に至っていました。この確執の主な原因とされる出来事は以下の通りです。
「長嶋茂雄」商標権問題(2008年頃~)
一茂さんの妻が代表を務める会社(または一茂さんの個人事務所「ナガシマ企画」)が、「長嶋茂雄」の名前を商標として出願。これに対し、長嶋茂雄さん本人と、次女・三奈さんが代表を務める「株式会社オフィスエヌ」側が、権利はオフィスエヌが一括管理すると強く反発しました。茂雄さんはメディアに対し家紋入りの通知文書でその旨を宣言する事態にまで発展し、親子間の対立が公になりました。最終的に一茂さん側は商標登録を放棄したとされますが、この一件は大きな亀裂を生みました。
記念品売却事件(2009年報道)
一茂さんが、父・茂雄さんの自宅(田園調布の邸宅の地下室など)に保管されていた数々の貴重な記念品(MVPの盾、新人王トロフィー、ユニフォーム、さらには故・亜希子夫人の遺品や一茂さん自身の卒業証書まで)を、家族に無断で福井県のコレクター(スポーツミュージアム山田コレクション・故山田勝三氏)に数千万円(一説には1億円以上)で売却したと週刊誌などで報じられました。この報道に対し、茂雄さんや三奈さんは激怒したとされ、父子の溝は決定的になったと言われています。一茂さんは後にテレビ番組で、売却の事実は認めつつも、その経緯や認識については異なる主張をしていたこともあります。
野球観の違いとコミュニケーション不全
一茂さんは、プロ野球選手として父と同じ巨人軍にも在籍しましたが、大きな成功を収めることはできませんでした。引退後、タレントとして独自の道を歩む中で、野球一筋の父・茂雄さんとの間に価値観の相違やコミュニケーションの断絶が生じたとも語っています。「父親と話をしなくなったのは、親と話をすることは野球しかないから。父は野球こそが人生、僕はもう野球こそが人生と言えないから」といった趣旨の発言も見られました。
これらの出来事が積み重なり、父子の関係は「絶縁状態」とまで言われるほど悪化してしまったのです。この深い確執が、一茂さんの「相続放棄」という意思表示に繋がっていることは想像に難くありません。
3-4. 「ハワイの母の墓の隣でゆっくり眠りたい」一茂氏の胸中
父・茂雄さんや他の家族との関係が複雑な一方で、長嶋一茂さんは亡き母・亜希子さんに対しては深い愛情と敬慕の念を抱き続けていることが、様々な発言からうかがえます。特に、ハワイに分骨されている亜希子さんのお墓は、一茂さんにとって特別な場所のようです。
一茂さんは雑誌「ゲーテ」の連載エッセイで、「母が旅立ってもう14年になるが、1日たりとも思い出さなかった日はない。今でも毎日のように母と会話をする」「ハワイには、遺言で分骨した母の墓もあるので、墓前でお袋に話しかけながら考えを整理する」と綴っています。さらに、2018年放送のテレビ番組「アナザースカイ」では、ハワイの母の墓を訪れ、「そのうちお袋の近くに行く。それは娘たちにも言ってあんの」「ハワイのお袋の墓の隣でゆっくり眠りたい」と語っていました。
この発言は、一茂さんが自身の終の棲家として、父・茂雄さんと同じ日本の墓(東京都世田谷区の九品仏浄真寺に亜希子夫人と共に眠る予定とされています)ではなく、ハワイの母の傍らを選びたいという強い願望を示していると解釈できます。これは、父や長嶋家との距離感を象徴するとともに、母への深い思慕の情を表していると言えるでしょう。このような心情もまた、「相続放棄」発言の背景にある複雑な家族関係と無縁ではないと考えられます。


4. 長嶋茂雄の新財団とは何?
長嶋茂雄さんの晩年において、その資産管理や将来への布石として注目されるのが、2023年に設立された「長嶋茂雄一般財団法人」です。この新財団の設立目的や役員構成、そして遺産相続との関連性について、報道されている情報を基に詳しく見ていきましょう。
4-1. 「長嶋茂雄一般財団法人」設立の目的と概要
「長嶋茂雄一般財団法人」は、2023年5月16日(登記簿によっては5月22日)に設立されました。その基本情報は以下の通りです。
- 名称: 長嶋茂雄一般財団法人
- 法人番号: 8010805003024
- 主たる事務所の所在地: 東京都大田区田園調布3丁目29番19号(長嶋茂雄さんの自宅と同一)
- 設立時の代表理事: 長嶋茂雄
- 登記簿上の目的: 「野球を主体に広くスポーツ全般への競技の普及、振興」「児童、若者に野球、スポーツ全般の競技力向上を目指すことを目的とした関係諸団体との共催または後援事業」など。
これらの情報から、財団の表向きの目的は、長嶋茂雄さんの名を冠して野球を中心としたスポーツの普及や振興、特に次世代の育成に貢献することにあると読み取れます。長年、球界の発展に尽力してきたミスターの遺志を形にするものと言えるでしょう。
4-2. 新財団の役員構成と運営体制:親族は関与せず?
「長嶋茂雄一般財団法人」の設立時の役員構成は、代表理事である長嶋茂雄さんご本人に加え、理事2名(一部報道では3名)、評議員3名、監事1名が名を連ねていたと報じられています。注目すべきは、これらの役員の中に、長嶋茂雄さんの親族の名前が見当たらない(週刊文春2024年8月7日号報道時点)という点です。
役員には、元報知新聞社の専務で長嶋茂雄さんと長年親交の深いジャーナリストのK氏や、長嶋茂雄さんの個人事務所「株式会社オフィスエヌ」の事務職員とされる女性、過去に長嶋家の関連会社で監査役を務めていた男性など、ミスターの側近や長年の協力者が中心となっているようです。
親族が役員に含まれていないことは、財団の運営において公平性や透明性を保つため、あるいは特定の家族への利益誘導と見なされることを避けるための措置である可能性が考えられます。ただし、財団の実際の運営には、長嶋茂雄さんの意向を最もよく理解する人物として、次女の長島三奈さんが何らかの形で深く関与していくことが予想されます。事実、後述する財団の最初の事業では、三奈さんがメッセージを代読するなど、実質的な役割を担っていました。
長嶋茂雄さんのご逝去に伴い、代表理事の変更など、財団の運営体制にも変化が生じることが確実です。今後の新体制がどのように組まれ、誰が財団の舵取りを行っていくのかが注目されます。
4-3. 財団設立の真の狙い:資産管理、相続対策、そしてミスターの遺志
「長嶋茂雄一般財団法人」の設立には、公表されているスポーツ振興という目的以外にも、いくつかの重要な狙いがあったと複数のメディア(週刊文春、デイリー新潮など)が報じています。これらは、長嶋茂雄さんの「終活」の一環とも言えるかもしれません。
- 資産管理と保全:
長嶋茂雄さんの莫大な個人資産、特に不動産などを財団に移管することで、個人名義ではなく法人格として管理・保全することが可能になります。これにより、資産の散逸を防ぎ、ミスターの野球への貢献を永続的な形で社会に還元する仕組みを構築しようとしたと考えられます。 - 相続税対策:
一般的に、財団法人に財産を寄付した場合、一定の要件(公益性など)を満たせば、その寄付された財産には相続税が課税されないという特例があります(租税特別措置法第70条)。長嶋茂雄さんの資産規模を考えると、相続税は莫大な額になることが予想されるため、財団への寄付を通じて相続財産を圧縮し、税負担を軽減する狙いがあった可能性は高いでしょう。 - 「長嶋ブランド」の永続化と活用:
「長嶋茂雄」という名前や肖像権は大きな価値を持ちます。これらの権利を財団が管理することで、ミスターの逝去後もそのブランド価値を維持し、野球振興などの公益目的のために活用していく体制を整えようとしたと考えられます。 - 家族間の紛争回避:
複雑な家族関係を抱える長嶋家において、遺産相続が紛争の火種となることは避けたいところです。主要な資産をあらかじめ財団に移すことで、相続人間の直接的な財産分割の対象を減らし、争いの可能性を低減させる意図があったのかもしれません。役員に親族を入れなかったのも、その一環と考えられます。 - 社会貢献とミスターの遺志の実現:
そしてもちろん、登記簿上の目的にある通り、野球界への恩返しや次世代育成といった社会貢献活動を通じて、長嶋茂雄さんの野球への情熱や理念を未来に伝えていくという純粋な願いも、大きな動機であったことは間違いないでしょう。
これらの複数の目的が絡み合い、「長嶋茂雄一般財団法人」の設立に至ったと推測されます。
4-4. 新財団の具体的な活動:能登半島地震への支援に見る未来
「長嶋茂雄一般財団法人」は設立からしばらく目立った活動が見られませんでしたが、2024年6月、最初の具体的な支援活動を行ったことが報じられました。それは、同年に発生した能登半島地震で被災した石川県の高校球児たちへの支援です。
財団は、石川県内の高校50校に対し、それぞれ金属バットを3本ずつ寄贈しました。この際、現地に赴き、長嶋茂雄さんの「被災地に用具を送れば、元気づけることができるのでは」というメッセージを代読したのは、次女の長島三奈さんでした。この活動は、財団が今後、野球を通じた社会貢献、特に困難な状況にある人々への支援を積極的に行っていく可能性を示唆しています。
ミスターの逝去により、財団の活動は新たな局面を迎えます。今後、どのような事業を展開し、長嶋茂雄さんの名を冠するにふさわしい貢献を果たしていくのか、その動向が注目されます。長嶋茂雄さんの野球への愛と情熱が、この財団を通じて未来永劫受け継がれていくことが期待されます。
5. まとめ:ミスターが遺した財産と家族の未来、そして受け継がれる遺志
2025年6月3日、日本プロ野球界の不滅の巨星、長嶋茂雄さんが逝去されました。その輝かしい功績とともに、ミスターが遺された莫大な財産と、その相続の行方に多くの関心が寄せられています。本記事では、以下の点について詳細に調査・解説してまいりました。
- 長嶋茂雄さんの財産について:
- 総資産は推定17億円から20億円規模。
- 主な内訳は、田園調布の自宅(約6億3600万円以上)をはじめとする複数の不動産、読売巨人軍からの終身名誉監督報酬(年間約1億円)、文化功労者年金、そして「長嶋茂雄」ブランドからもたらされる肖像権収入など。
- これらの資産は、長年にわたる球界への貢献と多方面での活躍によって築き上げられました。
- 遺産相続の行方と相続人について:
- 法定相続人は、長男・一茂さん、長女・有希さん、次女・三奈さん、次男・正興さんの4人の子供たち。
- 遺言書の有無や内容にもよりますが、原則として各相続人が4分の1ずつの法定相続分を有します。
- 喪主は次女の三奈さんが務め、長年にわたり父を支え、資産管理にも深く関与してきた背景が示唆されます。
- 長嶋一茂さんの「相続放棄」発言の真相について:
- 一茂さんは過去に複数回「相続放棄」を公言していますが、法的には被相続人の生前の意思表示は無効です。
- 正式な相続放棄は、長嶋茂雄さんの死去を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所への申述が必要です。
- この発言の背景には、父・茂雄氏との商標権問題や記念品売却事件などを巡る深刻な確執、「絶縁状態」ともいえる関係があります。
- 一茂さんは母・亜希子さんの眠るハワイの墓への思慕を語っており、長嶋家との距離感がうかがえます。
- 「長嶋茂雄一般財団法人」の役割について:
- 2023年5月に設立され、目的は野球を中心としたスポーツ振興や次世代育成。
- 設立時の代表理事は長嶋茂雄さん本人で、役員に親族の名は見られませんでした。
- 設立の狙いには、資産管理・保全、相続税対策、ブランド永続化、家族間紛争の回避、そしてミスターの社会貢献への遺志などが複合的にあったと推測されます。
- 2024年には能登半島地震の被災地へ野球用具を寄贈するなどの活動を開始しています。
長嶋茂雄さんが遺したものは、金額では計り知れない野球への情熱、国民に与えた夢と感動、そして数々の伝説です。しかし、その一方で、現実的な遺産相続という問題が、残された家族の前に横たわっています。複雑な家族関係がこの相続にどのような影響を与えるのか、長嶋一茂さんは最終的にどのような決断を下すのか、そして「長嶋茂雄一般財団法人」が今後どのような役割を果たしていくのか、予断を許しません。
今後、相続放棄の期限である3ヶ月以内、そして相続税の申告・納付期限である10ヶ月以内といった節目で、具体的な動きが出てくる可能性があります。ミスター・ジャイアンツの最後のバトンが、どのような形で次世代に渡されるのか、日本中が静かに見守っています。
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