2025年6月19日現在、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)との戦いは新たな局面を迎えています。パンデミック初期から世界中で進められたワクチン接種は、多くの人々の命を救い、重症化を防ぐ上で大きな役割を果たしてきました。しかしその一方で、ワクチン接種後に原因不明の体調不良、いわゆる「コロナワクチン後遺症」を訴える声も少なくありません。これらの症状の原因は何なのでしょうか。そして、最近「週刊文春」でも報じられた、米イェール大学の岩崎明子教授らの研究で焦点となっている「スパイクタンパク」が体内に「消えない」で「残る」という可能性は、私たちの身体に「どうなる」影響を及ぼすのでしょうか。
この記事では、現在明らかになっている情報を基に、以下の点を徹底的に調査し、解説していきます。
- コロナワクチン後遺症の具体的な症状と、その原因として浮上している「スパイクタンパク残存説」の詳細。
- 「スパイクタンパク」とはそもそも何なのか、そして体内に残り続けることの潜在的な危険性。
- イェール大学の岩崎明子教授の研究内容と、それに対する他の専門家の見解。
- 厚生労働省のこれまでの説明と、今回の研究結果が示す矛盾点、そして「厚労省は嘘をついていたのか」という疑問。
- 「反ワクチンは正しかったのか」という議論も含め、この問題に私たちはどう向き合うべきか。
ワクチン接種を経験した多くの方々、そしてこれから接種を考える可能性のある方々にとって、正確でバランスの取れた情報は不可欠です。本記事が、その一助となることを目指します。
1. コロナワクチンの後遺症、その原因は一体何?イェール大学岩崎明子教授の衝撃的な発見とは【文春砲】


コロナワクチン接種後に報告されるようになった、遷延する体調不良、いわゆる「コロナワクチン後遺症」。その原因については、これまで様々な可能性が議論されてきましたが、決定的な特定には至っていませんでした。そんな中、免疫学の世界的権威である米イェール大学の岩崎明子教授らの研究チームが、2025年2月に発表した論文は、この問題に新たな光を当てるものとして大きな注目を集めています。「週刊文春」でも取り上げられたその内容は、まさに衝撃的と言えるものでした。このセクションでは、まず岩崎明子教授の研究が何を明らかにしたのか、そしてそれがなぜこれほどまでに注目されるのか、その背景と詳細に迫ります。
1-1. 世界が注目するコロナワクチン後遺症の議論と現状の課題は何か?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック対策として、世界中で大規模なワクチン接種が推進されました。これにより、感染拡大の抑制や重症化率の低下といった大きな成果が得られたことは疑いようがありません。しかし、その一方で、ワクチン接種後に長期にわたる様々な体調不良を訴える人々が現れ始めました。これらは一般に「コロナワクチン後遺症」と呼ばれ、その症状は倦怠感、頭痛、ブレインフォグ(思考力の低下)、筋肉痛、関節痛、動悸、息切れなど多岐にわたります。
これらの症状は、客観的な検査で異常が見つかりにくいことも多く、患者さんたちは「気のせいではないか」「精神的なものでは」といった周囲の無理解に苦しむケースも少なくありませんでした。また、医療機関を受診しても、明確な診断がつかず、対症療法に留まることが多いのが現状です。ワクチン後遺症の原因究明と治療法の確立は、喫緊の課題として認識されつつありますが、そのメカニズムは未だ解明されていない部分が多く残されています。こうした状況下で、岩崎明子教授の研究は、後遺症の原因解明に向けた重要な一歩となる可能性を秘めているのです。
1-2. 岩崎明子教授とは何者?その経歴と世界的権威とされる理由はなぜ?
今回の研究を主導した岩崎明子(いわさき あきこ)教授は、免疫学、特に自然免疫や粘膜免疫、そしてウイルス感染に対する免疫応答の分野で世界的に知られる研究者です。1970年生まれ、15歳で日本を離れ、カナダの高校、トロント大学で生化学と物理学を学び、同大学大学院で免疫学の博士号を取得されました。その後、アメリカ国立衛生研究所(NIH)でのポスドク研究を経て、2000年にイェール大学医学部に助教授として着任、2009年には同大学の教授に就任されています。現在は、イェール大学のスターリングプロフェッサー(同大学で最高の栄誉とされる教授職)を務め、ハワード・ヒューズ医学研究所の研究員も兼任されています。
岩崎教授の研究室は、インフルエンザウイルスやヘルペスウイルスなど様々な感染症に対する免疫応答のメカニズム解明で多くの業績を上げてきました。特に新型コロナウイルス感染症パンデミック以降は、COVID-19の発症機序、後遺症(Long COVID)、そしてワクチンに関する研究に精力的に取り組み、その成果は国際的な科学雑誌に多数発表されています。2024年には、新型コロナウイルス感染症の後遺症解明などに役立つ免疫学の研究が評価され、米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」の一人に選出されるなど、その功績は国際的にも高く評価されています。まさに、現代免疫学をリードするトップランナーの一人と言えるでしょう。
1-3. 「スパイクタンパクが消えない人がいる」岩崎教授の研究論文は何を明らかにしたのか?
2025年2月に発表され、「週刊文春」でも報じられた岩崎明子教授らの研究論文の核心は、「新型コロナワクチンの接種後、一定期間を経れば消えるとされていたスパイクタンパクが、一部の人では体内に長期間残存し、それがワクチン後遺症の原因になっている可能性がある」というものです。これは、従来の医学界の常識を覆す可能性のある、非常に重要な指摘を含んでいます。
研究チームは、ワクチン接種後に後遺症を訴える患者さんたちの血液サンプルを詳細に分析しました。その結果、ワクチン後遺症が疑われる42人のうち15人の血中から、新型コロナウイルスのスパイクタンパクが検出されたのです。驚くべきことに、これらのスパイクタンパクは、ワクチン接種から短い人で26日後、最も長い人ではなんと709日後(約2年後)にも検出されました。これは、従来「スパイクタンパクはワクチン接種後、長くとも数週間以内には体内で分解・消失する」とされてきた見解とは大きく異なる結果です。この「消えないスパイクタンパク」が、何らかの形で免疫系を刺激し続けたり、あるいは直接的に組織に影響を与えたりすることで、ワクチン後遺症特有の様々な症状を引き起こしているのではないか、というのが岩崎教授らの提起する新たな仮説なのです。
1-4. ワクチン接種を推奨してきた岩崎教授が後遺症研究に踏み出した背景と動機は何だったのか?
岩崎明子教授自身は、ワクチン研究者として、新型コロナワクチンの有効性を認め、接種を推奨する立場を一貫して取ってきました。彼女自身も「打てるワクチンは全部打ってきた」と公言しています。では、なぜそのような立場の研究者が、ワクチンの負の側面とも言える後遺症の研究に踏み出したのでしょうか。
岩崎教授はインタビューで、「コロナ後遺症の血液サンプルを集めてきた過程で、『ワクチンを打ってから体調が悪くなった。自分はコロナにはなっておらずワクチンの後遺症ではないか』と訴える人が複数いた」と語っています。ワクチン接種を推奨してきた免疫学者として、こうした声に真摯に向き合い、その原因を科学的に解明する義務があると感じたことが、研究開始の動機であったようです。「メリットだけを強調してワクチン後遺症を存在していないかのようにしてしまうのは、研究者の良心にもとると思った」という言葉からは、科学者としての誠実な姿勢がうかがえます。ワクチンをより安全なものとし、その恩恵を最大化するためにも、稀ながら起こりうる負の事象から目を背けず、科学的に検証していくことの重要性を示唆しています。
2. 消えないスパイクタンパクは本当?ワクチン後遺症との関連性と具体的な症状を徹底解説
岩崎明子教授の研究によって示された「消えないスパイクタンパク」の可能性は、コロナワクチン後遺症に苦しむ人々にとって、その原因解明への一縷の望みとなるかもしれません。しかし、この発見はまだ初期段階であり、多くの疑問点が残されています。このセクションでは、スパイクタンパクが体内に残り続けるとは具体的にどういうことなのか、それがワクチン後遺症の多様な症状とどう関連しているのか、そして「いつまで」続くのかといった疑問について、現在分かっている情報を基に詳しく解説します。一体、私たちの体の中で「何があった」のでしょうか。
2-1. スパイクタンパクが体内に残り続けるとはどういうことか?従来の定説との違いはどこにある?
新型コロナワクチン、特にファイザー社やモデルナ社製のmRNAワクチンは、ウイルスのスパイクタンパク質の設計図となるmRNA(メッセンジャーRNA)を脂質の膜に包んで体内に投与するものです。このmRNAが細胞に取り込まれると、細胞内でスパイクタンパク質が一時的に産生されます。そして、このスパイクタンパク質を異物と認識した免疫系が抗体(特に中和抗体)を作り出すことで、実際のウイルス感染に備える、というのが基本的な仕組みです。
従来の定説では、ワクチンによって細胞内で作られたmRNA自体は、半日から数日という非常に短い期間で分解され、それによって産生されたスパイクタンパク質も、約2週間以内には体内で分解・消失すると考えられてきました。例えば、2021年6月24日のブログで、当時のワクチン担当大臣であった河野太郎氏は「mRNAは半日から数日で分解され、ワクチンにより作られるスパイク蛋白も約2週間以内でほとんどがなくなります」と記述しており、厚生労働省や多くの専門家も同様の説明をしてきました。これは、ハーバード大学のデビッド・R・ウォルト氏らによる研究論文(ワクチン接種後1週間以内にスパイクタンパクは血中から消失する)などが根拠とされていました。しかし、岩崎教授らの研究は、この「スパイクタンパクは短期間で消える」という従来の定説に疑問を投げかけるものなのです。
2-2. 岩崎教授の研究で判明したスパイクタンパクの残存期間は?(最長709日の衝撃)
岩崎教授らの研究チームが調査したのは、ワクチン後遺症が疑われる患者さん42人と、後遺症が全くなかった健常者22人の血液サンプルでした。これらのサンプルは2022年12月から2023年11月にかけて収集されました。その解析結果は驚くべきものでした。ワクチン後遺症を訴える42人のうち15人の血中から、遊離した状態のスパイクタンパクが検出されたのです。
さらに衝撃的だったのは、その残存期間です。スパイクタンパクが検出された患者さんの中で、最も短いケースでもワクチン接種後26日が経過していました。そして、最も長いケースでは、なんと接種後709日、つまり約2年もの間、血中にスパイクタンパクが検出され続けたのです。この「709日」という数字は、従来の「2週間で消える」という説明とはかけ離れており、医学界に大きなインパクトを与えました。もし、スパイクタンパクがこれほど長期間にわたって体内に存在し続けるのであれば、それが何らかの形で持続的な免疫応答や炎症反応を引き起こし、後遺症の原因となっている可能性が考えられます。
2-3. ワクチン後遺症で報告されている具体的な症状は何?(過度の疲労、ブレインフォグ、耳鳴りなど多岐にわたる苦痛)
岩崎教授の研究では、ワクチン後遺症を訴える患者さんたちが具体的にどのような症状に苦しんでいるのかも調査されています。報告された症状は非常に多岐にわたりますが、代表的なものとしては以下のようなものが挙げられます。
- 過度の疲労感・倦怠感: 日常生活に支障をきたすほどの強い疲れが持続する。
- チクチク感・しびれ: 手足や体の各所に原因不明の感覚異常が現れる。
- 運動耐性の低下: 以前は問題なくこなせていた運動や活動が、少し行うだけですぐに疲れてしまう。
- ブレインフォグ: 頭に霧がかかったように思考力が低下し、集中困難、記憶力低下などが起こる。
- 睡眠障害: 入眠困難や中途覚醒など、睡眠の質が著しく低下する。
- 耳鳴り: 原因不明の耳鳴りが持続する。
- インターナルバイブレーション: 体の中にスマートフォンが入ってブルブルと震えているような奇妙な内部振動感覚が続く。
- その他: 頭痛、めまい、動悸、息切れ、筋肉痛、関節痛、消化器症状など。
これらの症状は、一つだけ現れることもあれば、複数が組み合わさって現れることもあり、その程度も人によって様々です。岩崎教授は、これらの症状の多くが、ワクチン接種直後に見られる一時的な副反応(発熱、倦怠感、震え、痛みなど)と似ている点を指摘しています。しかし、ワクチン後遺症の場合は、これらの不調が2〜3日でおさまることなく、数ヶ月から数年にわたって持続するという点が大きな違いです。こうした長引く症状は、患者さんのQOL(生活の質)を著しく低下させ、精神的にも大きな負担となっています。
2-4. コロナ後遺症とワクチン後遺症の症状の違いは何か?見分けるためのポイントはどこにある?
コロナワクチン後遺症の症状は、新型コロナウイルスに感染した後に見られる後遺症(Long COVID、ロングコビッド)の症状と非常に似通っている点が多いとされています。例えば、倦怠感、ブレインフォグ、息切れ、頭痛などは、どちらの後遺症でもよく見られる代表的な症状です。この類似性が、両者の区別を難しくしている一因でもあります。
しかし、岩崎教授の研究では、いくつかの違いも指摘されています。最も顕著な違いとして挙げられているのが、味覚障害や嗅覚障害の有無です。コロナ後遺症(Long COVID)では、味覚や嗅覚に異常が生じることが比較的多く報告されていますが、岩崎教授らが調査したワクチン後遺症のケースでは、これらの症状はほとんど確認されなかったとのことです。これが、両者を見分ける上での一つの手がかりになるかもしれません。ただし、症状の現れ方には個人差が大きいため、これだけで断定することは難しいでしょう。
2-5. ワクチン後遺症の診断は難しい?ヌクレオカプシド抗原とは何か?
ワクチン後遺症か、あるいは未診断のコロナ感染による後遺症(Long COVID)なのかを区別するためには、過去のウイルス感染の有無を調べることが重要になります。その際に役立つのが、「ヌクレオカプシド抗体」の検査です。
新型コロナウイルスは、表面にスパイクタンパク質を持つだけでなく、内部にはヌクレオカプシドタンパク質という別の種類のタンパク質も持っています。mRNAワクチン(ファイザー製、モデルナ製など)は、スパイクタンパク質の情報のみを含んでいるため、ワクチン接種だけではスパイクタンパク質に対する抗体(抗S抗体)しか作られません。一方、実際に新型コロナウイルスに感染すると、スパイクタンパク質だけでなく、ヌクレオカプシドタンパク質に対しても免疫応答が起こり、ヌクレオカプシド抗体(抗N抗体)が産生されます。
したがって、血液検査で抗N抗体が陽性であれば過去に新型コロナウイルスに感染したことがあると判断でき、陰性であれば(ごく最近の感染を除き)感染歴がない可能性が高いと考えられます。岩崎教授の研究では、このヌクレオカプシド抗体の有無を確認することで、調査対象者が直近でコロナに感染していない(つまり、症状がワクチンによるものである可能性が高い)と判断しています。このように、適切な検査を組み合わせることで、より正確な鑑別診断に近づける可能性があります。
2-6. 岩崎教授の研究の限界点と今後の展望は?(サンプル数、査読前の段階)
岩崎教授らの研究は画期的な内容を含んでいますが、教授自身も認めているように、いくつかの限界点が存在します。まず、調査対象となった患者さんのサンプル数がまだ少ないという点です。ワクチン後遺症疑い群でスパイクタンパクが検出されたのは15人であり、統計的な確固たる結論を導き出すには、より大規模な研究が必要です。研究予算の制約などもあり、今後の課題とされています。
また、この論文は発表時点でまだ査読前(ピアレビューを経ていない段階)であることも留意すべき点です。査読とは、学術雑誌に論文が掲載される前に、同じ分野の専門家(査読者)が論文の内容を厳密に評価し、その科学的な妥当性や信頼性を検証するプロセスです。査読を経ていない論文は、あくまで暫定的な報告と捉える必要があります。岩崎教授は、今後も研究を継続し、これらの限界点を克服していく意向を示しています。この研究がきっかけとなり、世界中で同様の研究が進み、ワクチン後遺症のメカニズム解明や治療法開発に繋がることが期待されます。
3. スパイクタンパクとは一体何?体内に残るとどうなる?そのメカニズムと危険性に迫る
コロナワクチン後遺症の原因として、にわかに注目を集めている「スパイクタンパク」。この言葉を耳にする機会は増えましたが、「スパイクタンパクとは一体何なのか?」「なぜ体内に残ることが問題視されるのか?」「もし残ってしまった場合、私たちの体にどのような影響(危険性)があるのか?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。このセクションでは、スパイクタンパクの基本的な知識から、体内に残り続けるメカニズムに関する推測、そしてそれが引き起こす可能性のある影響について、様々な情報源を基に深掘りしていきます。これらの情報は、岩崎明子教授をはじめとする多くの研究者「誰が言った?」によって議論されているものです。
3-1. そもそもスパイクタンパクとは何か?コロナワクチンの仕組みと役割を分かりやすく解説
「スパイクタンパク質(spike protein)」または「Sタンパク質」とは、コロナウイルスの表面に存在する、トゲのような突起状のタンパク質のことです。このスパイクタンパク質は、ウイルスがヒトの細胞に侵入する際に非常に重要な役割を果たします。具体的には、ヒトの細胞表面にある「ACE2(アンジオテンシン変換酵素2)受容体」という部分に、鍵と鍵穴のように結合します。この結合をきっかけとして、ウイルスは細胞内に侵入し、増殖を開始するのです。
mRNAワクチン(ファイザー社製やモデルナ社製など)は、このスパイクタンパク質の設計図となる遺伝情報(mRNA)を利用しています。ワクチンを接種すると、このmRNAが体内の細胞に取り込まれ、その情報に基づいて一時的にスパイクタンパク質が産生されます。すると、私たちの免疫システムは、この体内で作られたスパイクタンパク質を「異物」と認識し、それに対する抗体(特にウイルスの中和能を持つ中和抗体)や免疫細胞(T細胞など)を準備します。これにより、実際に新型コロナウイルスが体内に侵入してきた際に、速やかにウイルスを排除したり、重症化を防いだりすることができるようになる、というのがワクチンの基本的な仕組みです。つまり、スパイクタンパク質は、免疫を獲得するための「標的」として利用されているのです。
Wikipediaによれば、スパイクタンパク質は一般的にウイルスのエンベロープ(外膜)から突出した構造で、ペプロマーとも呼ばれます。これらは通常、糖タンパク質であり、ウイルスの細胞への侵入や膜融合に関与し、また、免疫系に対する抗原としても機能します。
3-2. なぜスパイクタンパクが体内に残り続ける人がいるのか?考えられるメカニズムとは?(遺伝的要因、持続的産生など岩崎教授の推測)
岩崎明子教授の研究で、一部の人においてスパイクタンパクが長期間体内に残存する可能性が示されましたが、その正確なメカニズムはまだ解明されていません。なぜ、多くの人では速やかに消失するはずのスパイクタンパクが、特定の人では消えずに残り続けてしまうのでしょうか。岩崎教授は、いくつかの可能性を推測として示しています。
一つは、体内でスパイクタンパクが持続的に産生される何らかのメカニズムが存在する可能性です。例えば、ワクチン由来のmRNAが予想以上に長く細胞内に留まり、スパイクタンパクを作り続けてしまう、あるいは、極めて稀にゲノムDNAに組み込まれるような事態(ただし、mRNAワクチンはDNAに影響を与えないというのが一般的な見解です)が起きているのか、といった点が考えられますが、これらは現時点ではあくまで仮説の域を出ません。
もう一つは、遺伝的な要因です。人によって、特定のタンパク質を分解・処理する能力に差があることは知られています。スパイクタンパクが残りやすい体質、あるいは免疫応答の仕方に個人差があり、それがスパイクタンパクのクリアランス(体内からの除去)の遅延に関わっているのかもしれません。岩崎教授は、「遺伝的にスパイクタンパクが残りやすい要素を持っている人がいるのかもしれない」と述べています。これらの推測を検証するためには、さらなる詳細な研究が必要です。
3-3. スパイクタンパクが残存することの潜在的なリスクや体への影響とは何か?
もし、スパイクタンパクが本来消失するはずの期間を大幅に超えて体内に残り続ける場合、どのような潜在的リスクや身体への影響が考えられるのでしょうか。これもまだ研究途上の段階ですが、いくつかの可能性が議論されています。
一つは、持続的な炎症反応の誘発です。スパイクタンパクは免疫系にとって異物であるため、これが体内に存在し続けると、免疫システムが常に活性化された状態となり、慢性的な炎症を引き起こす可能性があります。この慢性炎症が、倦怠感、筋肉痛、関節痛、ブレインフォグといった多様な後遺症症状の原因となっているのかもしれません。
また、スパイクタンパク自体が、ACE2受容体を持つ細胞(血管内皮細胞、心筋細胞、神経細胞など、全身の様々な細胞に存在します)に結合し、直接的に細胞機能障害を引き起こす可能性も指摘されています。例えば、血管内皮細胞に影響を与えれば血栓形成傾向や血流障害に、神経細胞に影響を与えれば神経系の症状(しびれ、ブレインフォグなど)に繋がるかもしれません。さらに、自己免疫疾患の誘発や悪化も懸念されています。スパイクタンパクに対する免疫応答が、誤って自己の組織を攻撃してしまう「分子模倣」のような現象が起きる可能性も否定できません。これらのリスクについては、今後の研究による検証が待たれます。
3-4. 心筋炎との関連は?マサチューセッツ総合病院の研究は何を示したのか?(遊離スパイクタンパクの存在)
新型コロナワクチン接種後の稀な副反応として、心筋炎や心膜炎が報告されています。特に若年男性に多いとされていますが、そのメカニズムは完全には解明されていません。ここで注目されるのが、マサチューセッツ総合病院のLael M. Yonker氏らの研究グループによる報告です(Circulation誌オンライン版2023年1月4日掲載)。
この研究では、mRNAワクチン接種後に心筋炎を発症した青年および若年成人16例と、心筋炎を発症しなかった健康な対照群45例の血液を比較分析しました。その結果、心筋炎発症例の血中では、ワクチンによって産生された抗スパイク抗体に結合していない「遊離」の全長スパイクタンパク質が、非発症例(全例で検出不可)と比較して有意に高濃度(平均33.9pg/mL)で検出されたのです。この結果は、ワクチン接種後に血中に高濃度の遊離スパイクタンパクが存在することが、心筋炎の発症メカニズムに関与している可能性を示唆しています。岩崎教授の研究で示された「消えないスパイクタンパク」が、もし遊離した状態で血中を循環し続けるのであれば、心臓を含む様々な臓器に影響を与える可能性も考えられ、今後の研究の進展が注目されます。
3-5. スパイクタンパクに関する様々な情報源(富山大学、Wikipedia)からの知見まとめ
スパイクタンパクに関する理解を深めるために、他の情報源からの知見も見てみましょう。
富山大学附属病院のウェブサイトに掲載されている情報(川筋仁史特命助教、山本善裕教授による)では、mRNAワクチンの基本的な仕組みとして、スパイクタンパク質の遺伝情報(mRNA)を脂質の膜に包んで投与し、体内でスパイクタンパク質を産生させ、それに対する中和抗体などを誘導することで免疫を獲得すると解説されています。これは一般的な理解と一致します。
一方、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』の「スパイクタンパク質」の項目では、より専門的な情報が提供されています。コロナウイルスのスパイクタンパク質(Sタンパク質)はクラスI融合タンパク質であり、ウイルス感染の最初のステップであるウイルス侵入を媒介する役割を担うとされています。また、このタンパク質は点突然変異や相同組換えによって急速に進化する特性があり、そのゲノム領域は組換えのホットスポットであると指摘されています。さらに、Sタンパク質は非常に抗原性が高く、感染に反応して免疫系によって産生される抗体のほとんどを占めるため、COVID-19ワクチン開発の主要なターゲットとなっていることも明記されています。これらの情報は、スパイクタンパクがウイルスの感染戦略においていかに重要であり、また免疫応答の中心的な役割を果たすかを理解する上で役立ちます。
4. 厚労省は嘘をついていたのか?「スパイクタンパクは2週間で消滅」説明の真偽と今後の対応
岩崎明子教授らの研究結果は、これまで厚生労働省や専門家が説明してきた「ワクチン由来のスパイクタンパクは約2週間で体内から消失する」という見解と大きく異なります。この食い違いは、国民の間に「厚労省は嘘をついていたのではないか?」という疑念や不信感を生んでいます。このセクションでは、過去の厚労省の説明内容を再確認し、今回の研究結果との間にどのような矛盾点があるのかを検証します。そして、厚労省がこの新たな知見に対してどのような見解を示しているのか、今後の情報公開や対応は「どうなる」のか、そして「なぜ」このような状況が生じたのかについて考察します。
4-1. 河野太郎元ワクチン担当大臣や厚労省の過去の説明はどうだったのか?(ブログや公式見解の再検証)
新型コロナワクチンの接種が開始された当初から、国民の関心事の一つは、ワクチン成分が体内でどうなるのか、特にスパイクタンパクがどれくらいの期間体内に留まるのかという点でした。これに対し、政府や専門家からは「比較的短期間で分解・消失する」という趣旨の説明が一貫してなされてきました。
代表的な例として、当時ワクチン接種推進担当大臣であった河野太郎氏は、2021年6月24日付の自身のブログで、「mRNAは半日から数日で分解され、ワクチンにより作られるスパイク蛋白も約2週間以内でほとんどがなくなりますので、ご心配は無用です」と明確に記述しています。この「約2週間でほとんどがなくなる」という説明は、その後も厚生労働省のウェブサイトや広報資料、専門家による解説などで繰り返し用いられ、国民への安心材料として提供されてきました。この説明の根拠としては、前述のハーバード大学の研究者らによる論文(mRNAワクチン接種後、血漿中のスパイクタンパクは初回接種後平均5日目、2回目接種後平均2日目にピークを迎え、その後速やかに減少し、1週間後にはほとんど検出されなくなる)などが参照されていたと考えられます。
4-2. 岩崎教授の研究結果は、厚労省の従来の説明とどう矛盾するのか?
岩崎明子教授らの研究結果は、この「2週間で消失」という従来の説明と真っ向から矛盾する可能性を示しています。岩崎教授の研究では、ワクチン後遺症を訴える患者の一部において、ワクチン接種後709日(約2年)という長期間にわたり血中からスパイクタンパクが検出されました。これは「2週間」という期間とは比較にならないほどの長さです。
もちろん、岩崎教授の研究はまだ査読前であり、対象者数も限られているため、この結果をもって直ちに従来の定説が完全に覆ると断定することはできません。また、スパイクタンパクが検出されたのはワクチン後遺症を訴える患者の一部であり、全ての人で長期間残存するわけではない可能性も考慮する必要があります。しかし、少なくとも一部の人々においては、従来の説明通りにスパイクタンパクが短期間で消失していない可能性が科学的に示唆されたことは、非常に重い意味を持ちます。この矛盾点は、国民がワクチン情報に対する信頼を揺るがす一因となり得ます。
4-3. 厚労省は岩崎教授の論文をどう受け止めているのか?公式見解の詳細と背景
「週刊文春」が岩崎明子教授の論文について厚生労働省に見解を求めたところ、以下のような趣旨の回答があったと報じられています。
まず、新型コロナワクチン接種後の症状については、「医師等に報告義務が課される副反応疑い報告制度によって把握を行っている」とし、「厚生科学審議会の予防接種・ワクチン分科会、同分科会の副反応検討部会などの合同審議会において副反応疑い報告を全例評価し、ワクチンの安全性に係る重大な懸念は認められないと評価されています」と述べています。これは、従来の安全評価の枠組みに変更はないという立場を示したものです。
そして、岩崎教授の論文そのものについては、「個別の論文の内容等について、厚生労働省としてコメントすることは差し控えさせていただきます」と直接的な評価を避けています。その上で、「なお、mRNAワクチン接種後のスパイクタンパク質については、その薬事承認において、提出された試験データから、時間の経過とともに消失すると推察されると評価されているものと承知しております」と付け加えています。これは、現時点では薬事承認時の評価を変更する状況にはない、という従来の立場を維持する姿勢を示していると解釈できます。つまり、厚労省としては、新たな研究報告を認識しつつも、直ちに従来の見解を修正するには至っておらず、慎重な態度を崩していない状況です。
4-4. 副反応疑い報告制度は機能しているのか?厚労省の「安全性に重大な懸念なし」は信頼できるのか?
厚生労働省は、ワクチンの安全性を監視するために「副反応疑い報告制度」を設けています。これは、医療機関や製造販売業者から、ワクチン接種後に発生した様々な有害事象の報告を収集し、専門家会議で評価するシステムです。厚労省は、この制度に基づいて「ワクチンの安全性に係る重大な懸念は認められない」との評価を繰り返してきました。
しかし、この副反応疑い報告制度については、いくつかの課題も指摘されています。例えば、報告が医師の判断に委ねられているため、全ての副反応疑いが報告されているわけではない可能性(過少報告の可能性)や、報告された事象とワクチンとの因果関係の評価が難しいケースが多いことなどです。また、ワクチン後遺症のように、既存の診断基準では捉えにくい多様な症状や、長期間にわたる症状については、この制度の中で十分に評価・分析されにくいという側面もあるかもしれません。岩崎教授の研究のような基礎研究の知見が、こうした制度の評価基準や運用方法に今後どのように影響を与えていくのかが注目されます。
4-5. 国民への情報提供のあり方は適切だったのか?透明性と説明責任の観点から考察
今回の岩崎教授の研究報告は、ワクチンに関する情報提供のあり方についても重要な問題を提起しています。ワクチン接種という国民的規模の公衆衛生政策を進める上では、そのメリットだけでなく、潜在的なリスクや不確実性についても、国民に対して透明性の高い情報を提供し、十分な説明責任を果たすことが求められます。
「スパイクタンパクは2週間で消える」という説明は、多くの国民にとって安心材料となった一方で、結果として一部の現実とは異なっていた可能性が示唆されたわけです。科学は常に進歩し、新たな知見によって過去の理解が修正されることはあり得ます。重要なのは、そうした新たな知見が得られた際に、それを隠蔽したり軽視したりするのではなく、速やかに国民と共有し、必要であれば従来の説明を修正・補足する柔軟性と誠実さを持つことです。今回の件を教訓として、今後の情報提供においては、より一層の透明性と、国民の疑問や不安に真摯に答える姿勢が求められるでしょう。これが、科学と社会の信頼関係を維持・強化するために不可欠です。
5. 専門家の意見は?長崎大学森内浩幸教授の見解と岩崎明子教授の反論


岩崎明子教授の論文は、コロナワクチン後遺症とスパイクタンパク残存の関連性を示唆するものであり、大きな反響を呼んでいます。しかし、科学の世界では一つの研究結果だけで結論が出ることは稀であり、他の専門家による多角的な検証や意見が不可欠です。このセクションでは、日本ワクチン学会の理事も務める長崎大学の森内浩幸教授が、岩崎教授の論文に対してどのような評価と疑問点を提示しているのか、そしてそれに対して岩崎教授はどのように応答しているのかを詳しく見ていきます。「何が問題」とされ、どのような議論が交わされているのでしょうか。
5-1. 森内浩幸教授とはどんな人?日本ワクチン学会理事としての立場と専門性
森内浩幸(もりうち ひろゆき)教授は、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 小児科学の教授であり、感染症、特にウイルス感染症やワクチンに関する研究・診療の専門家です。日本小児科学会や日本感染症学会など多くの学会で要職を歴任し、日本ワクチン学会においては理事を務めるなど、日本のワクチン研究・普及において指導的な立場にある人物の一人です。新型コロナウイルス感染症パンデミックにおいても、専門家としてメディア等で積極的に情報発信を行い、ワクチンの有効性や安全性について解説してきました。その発言は、科学的根拠に基づきつつも、一般市民にも分かりやすいと定評があります。
5-2. 岩崎教授の論文に対する森内教授の評価ポイントはどこか?(画期的な点)
森内浩幸教授は、岩崎明子教授の研究グループがこのような論文を発表したこと自体を「画期的だ」と高く評価しています。特に重要なポイントとして、森内教授が挙げているのは、「コロナの後遺症(Long COVID)とワクチン後遺症の免疫学的な特徴が非常に似通っていると発表した点」です。これは、両者の症状の類似性の背景に、共通のあるいは類似の免疫学的メカニズムが働いている可能性を示唆するものです。
さらに森内教授は、「コロナワクチンで体内に作られたスパイクタンパクが700日以上という長期間にわたって体内に残っているのであれば、不都合な免疫応答が体内で起こり続けていて、体に悪影響を与えている可能性が出てくる」と述べており、スパイクタンパクの長期残存が後遺症の病態に関与する可能性を認めています。これは、岩崎教授の提起する仮説の重要性を支持するものと言えるでしょう。
5-3. 森内教授が指摘する疑問点1:後遺症群全員からスパイクタンパクが検出されていないのはなぜ?
一方で、森内浩幸教授は、現段階でスパイクタンパクがワクチン後遺症の原因であると断定するのは難しいとして、いくつかの疑問点を指摘しています。その一つ目が、血液サンプルの分析結果に関するものです。
岩崎教授の研究では、ワクチン後遺症を訴える患者さん42人のうち15人(約36%)からスパイクタンパクが検出されました。これは、後遺症がない対照群(22人中0人)と比較すると有意に高い割合ではありますが、裏を返せば、ワクチン後遺症を訴えているにもかかわらず、半数以上の人(27人、約64%)からはスパイクタンパクが検出されなかったということになります。森内教授は、「後遺症を訴える人たち全員にスパイクタンパクが検出されているのならば話は簡単ですが、実際には、決してそうではないのです」と指摘し、この点がスパイクタンパク原因説を単純に受け入れることを難しくしていると述べています。つまり、スパイクタンパクが検出されない後遺症患者の症状は、別のメカニズムによるものなのか、あるいはスパイクタンパクが関与していても検出限界以下の微量であるのかなど、さらなる検討が必要となります。
5-4. 森内教授が指摘する疑問点2:ワクチン後遺症の症状の非特異性とは何を意味するのか?
森内浩幸教授が指摘するもう一つの疑問点は、ワクチン後遺症として挙げられている症状の「非特異性」です。非特異的とは、その症状が特定の病気に固有のものではなく、他の様々な病気や不調でも現れうる、という意味です。
例えば、ワクチン後遺症の代表的な症状である倦怠感、頭痛、筋肉痛、ブレインフォグなどは、感染症後の体調不良、自己免疫疾患、精神的なストレス、更年期障害、栄養障害など、実に多様な原因で起こりえます。そのため、患者さんが訴える症状が、本当に体内に残ったスパイクタンパクによるものなのか、それとも全く別の原因によるものなのかを特定することが、現段階では非常に難しいと森内教授は指摘しています。この症状の非特異性の問題は、ワクチン後遺症の診断や治療法開発における大きなハードルの一つと言えるでしょう。
5-5. スパイクタンパクと後遺症の因果関係は証明されたのか?森内教授の見解は?
これらの疑問点を踏まえ、森内浩幸教授は、岩崎教授の論文は「ワクチン後遺症に苦しむ人にスパイクタンパクが残っている傾向が強いことを示したという点に留まっています。スパイクタンパクの残存と後遺症との因果関係を直接証明するものではありません」と結論付けています。つまり、相関関係(ワクチン後遺症の人にはスパイクタンパクが残りやすい傾向がある)は示唆されたものの、因果関係(スパイクタンパクが残っているから後遺症が起きる)を証明するには至っていない、という見解です。
科学的に因果関係を証明するためには、なぜスパイクタンパクが残り、それがどのようなメカニズムで具体的な症状を引き起こすのかを細胞レベル・分子レベルで解明する必要があります。また、より大規模な追跡調査や、介入研究(例えば、スパイクタンパクを除去する治療法を開発し、それによって症状が改善するかどうかを見るなど)も必要となるでしょう。森内教授の指摘は、今後の研究が目指すべき方向性を示唆しているとも言えます。
5-6. 岩崎教授は森内教授の指摘にどう答えたのか?研究の現状と課題
森内浩幸教授が呈したこれらの疑問点に対し、岩崎明子教授自身もインタビューの中で応答しています。まず、ワクチン後遺症患者の全員からスパイクタンパクが検出されたわけではない点については、「現状は、ワクチン後遺症の人の中には、体内で持続的にスパイクタンパクが生まれるメカニズムを持つ人や遺伝的にスパイクタンパクが残りやすい要素を持っている人がいるのかもしれない、と推測している段階です」と述べています。これは、まだ解明されていない個人差や未知のメカニズムが存在する可能性を示唆しており、今後の研究課題であることを認めています。
また、ワクチン後遺症の症状の非特異性については、「大半が他の疾患や要因でも起こりうると思いますが、中にはきわめて特徴的な症状もあるので、研究を進めているところです」と回答しています。「インターナルバイブレーション」のような特異性の高い症状を手がかりに、病態解明を進めようとしている姿勢がうかがえます。岩崎教授は、自身の研究がまだ途上であり、断定的なことは言えないとしつつも、ワクチン後遺症に苦しむ患者の存在を真摯に受け止め、科学的なアプローチでその原因究明に取り組む重要性を強調しています。
6. コロナワクチン後遺症とスパイクタンパク問題、「反ワクチンは正しかった」のか?今後の展望と私たちが知るべきこと【まとめ】
イェール大学の岩崎明子教授による「消えないスパイクタンパク」に関する研究発表は、科学界のみならず社会全体に大きな波紋を広げています。この問題は、コロナワクチンの安全性に対する新たな懸念を生むと同時に、「反ワクチン派の主張は正しかったのか?」といった極端な議論を招く可能性もはらんでいます。この最終セクションでは、今回の論文発表が巻き起こした様々な反応を整理し、ワクチンに対する考え方、そしてこの問題に私たちがどう向き合っていくべきか、今後の展望について考察します。重要なのは、冷静な視点と正確な情報に基づいて判断することです。
6-1. 岩崎教授の論文発表が巻き起こした反響とは?(反ワクチン派、科学者コミュニティからの反応)
岩崎明子教授が、コロナワクチン後遺症とスパイクタンパク残存の可能性に言及した論文を発表したことは、様々な方面から大きな反響を呼びました。岩崎教授自身が語っているように、その反応は両極端なものであったようです。
いわゆる「反ワクチン」の立場を取る人々からは、「ほら見ろ、やはりワクチンは危険だったのだ」「ワクチン推奨の考えを捨てて、反ワクチンの意見を言うべきだ」といった批判や、自説を補強する材料として論文が利用される動きが見られました。彼らにとっては、世界的な権威である岩崎教授がワクチンの潜在的なリスクに言及したこと自体が、自分たちの主張の正当性を裏付けるものと映ったのかもしれません。
一方で、科学者コミュニティやワクチン推進派の一部からは、「なぜ反ワクチンの考えを煽るような発表をしたのか」「時期尚早な情報公開ではないか」といった苦言や懸念の声も上がったとされています。ワクチンの安全性に対する疑念を不必要に広げ、公衆衛生上の取り組みに混乱を招くことを危惧したのでしょう。このように、同じ一つの科学的報告であっても、受け手の立場や価値観によって全く異なる解釈や反応が生まれることが、この問題の複雑さを示しています。
6-2. 岩崎教授が語る研究者の良心とワクチン推奨の立場とは何か?
このような両極からの批判や圧力の中で、岩崎明子教授は自身の研究者としてのスタンスを明確にしています。彼女は、「この研究は、ワクチンの意義や大切さを分かってもらいたいために、行ったものです。私自身、打てるワクチンは全部打ってきました。ワクチンにはメリットが大きく、推奨する考えに変わりはありません」と述べています。これは、今回の研究がワクチンそのものを否定するものではなく、むしろワクチンをより安全で効果的なものにするための科学的探求の一環であるという考えを示しています。
同時に、「ただ私は、メリットだけを強調してワクチン後遺症を存在していないかのようにしてしまうのは、研究者の良心にもとると思ったのです」とも語っており、科学者としての誠実さと倫理観を強調しています。たとえ稀なケースであっても、ワクチンによって不利益を被る可能性のある人々がいるのであれば、その現実から目を背けず、原因を究明し、対策を講じることが科学者の責務であるという信念がうかがえます。このバランスの取れた姿勢は、多くの人々に共感を呼ぶものでしょう。
6-3. 「反ワクチンは正しかった」という意見は妥当なのか?冷静な議論の必要性
岩崎教授の研究結果を受けて、「反ワクチン派の主張が正しかった」という短絡的な結論に飛びつくのは危険です。まず、岩崎教授の研究は、ワクチン後遺症の原因としてスパイクタンパク残存の可能性を示唆したものであり、ワクチンそのものの有用性を全面的に否定したものではありません。教授自身もワクチンのメリットを強調しています。また、研究はまだ初期段階であり、因果関係が完全に証明されたわけでもありません。
新型コロナワクチンが、パンデミック下において多数の重症化や死亡を防いできたという事実は、多くのデータによって裏付けられています。ワクチンの恩恵は非常に大きかったと言えるでしょう。一方で、いかなる医薬品やワクチンにも副反応のリスクはゼロではなく、稀に重篤な有害事象が発生しうることも事実です。重要なのは、メリットとリスクを総合的に比較衡量し、科学的根拠に基づいて冷静に議論することです。「全か無か」のような極端な思考ではなく、どのようにすればリスクを最小化し、メリットを最大化できるのかを建設的に考えていく必要があります。「反ワクチン」というレッテル貼りで議論を終結させるのではなく、提起された疑問や懸念には真摯に耳を傾け、科学的な検証を進めていく姿勢が求められます。
6-4. コロナワクチンのメリットとデメリットを改めて考える(森内教授、岩崎教授の見解)
今回の議論を機に、コロナワクチンのメリットとデメリットについて改めて整理しておくことが重要です。長崎大学の森内浩幸教授は、「これまでの研究でコロナワクチンを打つことにより、コロナ後遺症を減らしたり、症状を軽くしたりできるのは明白です。特に高齢者や基礎疾患を持つ方には有意義であることに変わりありません。メリットがデメリットを上回ると思います」と述べています。これは、特に感染時のリスクが高い人々にとって、ワクチンの予防効果は非常に大きいという専門家の共通認識を反映したものです。
岩崎明子教授も同様に、「ワクチンにはメリットが大きく、推奨する考えに変わりはありません」と明言しています。両教授ともに、稀に起こりうるワクチン後遺症の問題を認識しつつも、集団全体として見た場合のワクチンの公衆衛生的価値を高く評価しているのです。個々人にとっては、自身の健康状態、年齢、基礎疾患の有無、感染リスクなどを考慮し、医師と相談の上で接種の是非を判断することが基本となりますが、社会全体としては、ワクチンの恩恵がリスクを上回るという専門家の見解は依然として主流であると言えるでしょう。
6-5. 今後、ワクチン後遺症に苦しむ人々のために何が必要か?(治療法開発、理解促進)
スパイクタンパク残存説が真実であったとしても、そうでなかったとしても、現実にワクチン接種後に長期的な体調不良に苦しんでいる人々が存在することは事実です。これらの人々のためには、まず正確な診断法の確立と有効な治療法の開発が急務です。岩崎教授の研究が、その第一歩となることが期待されます。もしスパイクタンパクの残存が原因であるならば、それらを体内から除去する方法や、その下流で起こる免疫異常を是正する治療などが考えられるかもしれません。
同時に、社会全体の理解促進も不可欠です。ワクチン後遺症の症状は多様で、客観的な検査所見に乏しいこともあり、周囲の無理解や偏見に苦しむ患者さんが少なくありません。「気のせい」「怠けている」といった心ない言葉に傷つくこともあります。医療関係者を含め、社会全体がこの問題の存在を認識し、患者さんに寄り添う姿勢を持つことが重要です。また、相談窓口の充実や経済的支援など、具体的なサポート体制の整備も求められます。
6-6. 私たちはこの問題から何を学び、どう向き合うべきか?情報リテラシーの重要性
コロナワクチン後遺症とスパイクタンパクを巡る一連の議論は、私たちに多くの教訓を与えてくれます。その一つは、科学の不確実性と進歩の過程を理解することの重要性です。科学的な知見は固定的なものではなく、新たな研究によって常に更新されていく可能性があります。初期の情報が絶対的な真実であるとは限らず、時には修正されたり、覆されたりすることもあるのです。
このような状況下で私たち一人ひとりに求められるのは、質の高い情報リテラシーです。すなわち、情報の出所を確認し、感情的な論調や陰謀論に惑わされず、複数の情報源を比較検討し、科学的根拠に基づいて冷静に判断する能力です。特にインターネット上には、玉石混交の情報が溢れています。専門家の意見であっても、その背景や立場を考慮し、鵜呑みにせず批判的に吟味する姿勢が大切です。そして、分からないことや不安なことがあれば、信頼できる専門家(かかりつけ医など)に相談することが賢明です。
6-7. 【総まとめ】コロナワクチン後遺症とスパイクタンパク問題の現状と今後の課題
最後に、本記事で取り上げたコロナワクチン後遺症とスパイクタンパク問題に関する現状と今後の課題をまとめます。
- コロナワクチン後遺症の原因として、イェール大学の岩崎明子教授らにより、ワクチン由来のスパイクタンパクが体内に長期間残存する可能性が新たに指摘されました【誰が、何を、いつ、どこで】。
- 岩崎教授の研究では、ワクチン後遺症患者の一部で、接種後最長709日経過しても血中からスパイクタンパクが検出され、これが従来の「2週間で消失する」という説明と矛盾しています【何があった】。
- スパイクタンパクとは、コロナウイルスが細胞に侵入する際に使われるタンパク質で、mRNAワクチンはこのタンパク質を体内で作らせて免疫を誘導します。これが消えないで残るとどうなるかについては、持続的な炎症や自己免疫反応などを引き起こす可能性が懸念されていますが、詳細なメカニズムは未解明です【何、どうなる】。
- 他の専門家(例:長崎大学の森内浩幸教授)は、岩崎教授の研究の画期性を認めつつも、後遺症患者全員からスパイクタンパクが検出されていない点や症状の非特異性から、原因と断定するには時期尚早との見解を示しています【なぜ】。
- 厚生労働省は、従来の「スパイクタンパクは時間経過とともに消失する」との評価を維持し、岩崎教授の個別論文へのコメントは控えています。情報公開のあり方や国民への説明責任が問われています【どうなる】。
- 「反ワクチンは正しかった」という短絡的な結論ではなく、ワクチンのメリットとリスクを総合的に評価し、科学的根拠に基づいた冷静な議論と、後遺症に苦しむ人々への支援体制の構築が求められています。
- 今後の課題としては、スパイクタンパク残存のメカニズム解明、客観的な診断法の確立、有効な治療法の開発、そして社会全体の正しい理解と情報リテラシーの向上が挙げられます。
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